ダイエットや美容・健康目的でサプリメントを利用している人は多いでしょう。
現代では薬局だけでなく、身近にあるスーパーやコンビニエンスストアで、誰でも簡単にかつリーズナブルにサプリメントを購入することができます。
しかし、ダイエットや美容・健康への意識が高まる一方で、サプリメントをはじめとする食品やそれらに関する法律については無関心であることがほとんどです。
今回の記事は、サプリメントを常用している人やこれから購入を検討している人に、サプリメントについて知っておくべきことをまとめてお伝えします。
正しい知識をもってサプリメントを利用し、美容や健康に役立てていただけたらと思います。
サプリメントとは一体何か?
まずこちらの引用をご覧ください。
テレビ、雑誌、新聞、インターネットなどで毎日目にする健康食品。市場にはさまざまな健康 食品が流通していますが、健康食品が原因で体調を崩す事例なども出てきており、注意が必要です。あふれる情報にふりまわされず、健康食品について正しく理解できるよう、このパンフレットを参考に、冷静に考えてみてください。
これは2013年に厚生労働省が発行した健康食品の正しい利用法というパンフレットの冒頭です。
このパンフレットは、私たちの生活の中における健康食品やサプリメントの必要性を改めて考えるきっかけとなるはずです。
ぜひリンク先を読んでみてください。
確かに健康食品は手軽に購入でき、利用することができますが、果たしてそれらは本当に必要なものなのでしょうか?
健康食品の分類を確認しましょう
そもそもサプリメントは何でしょうか?
皆さんはこの質問に正確に答えることができますか?
日本の法律ではサプリメントは食品に分類されており、そして分類されたひとつひとつには各々規定が設けられています。
まずは図をご覧ください。
私たちが言う健康食品を簡単に分類すると、
- 保健機能食品
- 保健機能食品でないもの
の2つに分かれます。
それぞれについて説明しましょう。
保健機能食品
図の赤で囲まれた箇所が保健機能食品と呼ばれ、特性別に特定保健用食品、栄養機能食品、機能性表示食品に分かれます。
特定保健用食品
特定保健用食品は通称トクホでお馴染みでしょう。
独特のマークは誰でも見たことがあるはずです。
消費者庁によると、特定保健用食品には以下の規定がありますので、引用したいと思います。
- 食生活において特定の保健の目的で摂取する者に対し、その摂取により当該特定の保健の目的が期待できる旨の表示を行うもの。
- 特定保健用食品として食品を販売するには、その表示について消費者庁長官の許可を受けなければならない (健康増進法第26条第1項)。
- 表示の許可に当たっては、食品ごとに食品の有効性や安全性について国の審査を受ける必要がある。
要は、健康維持や健康増進への効果が科学的に認められており、効果や安全性について国がきちんと審査を行っている製品です。
審査をクリアすれば各々製品ごとに消費者庁が許可を出して販売される、いう点が大きな特徴でしょう。
なお、国が制度化し、許可を出している食品は特定保健用食品の他に特別用途食品というものがあります。
これは病者用食品や乳幼児用調製粉乳など、医学的にかつ栄養学的に配慮の必要が認められた特定者の健康維持・回復に適していると許可された食品に表示されるものです。
妊産婦や授乳婦用の粉乳にも表示されていることがありますね。
栄養機能食品
一方で栄養機能食品は国の審査を必要とせず、製造者が認証して販売されているものです。
日頃不足しやすいビタミンやミネラルなどを補給する目的で利用する食品につけられていることが多いでしょう。
なぜ国の審査が不要なのかと言いますと、成分の配合量は科学的根拠のもと既に確認されているからです。
配合量が一定の基準量を満たしていれば、製造者は届出をしなくとも規定に沿って栄養機能食品を表示することが可能なのです。
機能性表示食品
こちらは健康維持や健康増進に効果が期待できる機能性をもつ製品に表示されるものです。
栄養機能食品と同様に国の審査はなく、消費者庁への届出だけで表示することが可能です。
無論、期待できる機能性については科学的な根拠に基づいており、販売前に製品の安全性や機能性についての情報はきちんと消費者庁に届けられています。
ちなみに機能性表示食品の制度は、食品衛生法に基づいて2015年から開始された比較的新しい制度です。
保健機能食品でないもの
これは図にある通りいわゆる健康食品や、一般食品のことを指します。
効能・機能については表示できない決まりがあります。
健康食品という表示の注意点
大まかですが食品の分類は理解いただけたかと思います。
さて、薬局やスーパーで販売されている健康食品を見てみると、サプリメントという名称のほか、健康補助食品、健康飲料、栄養補助食品などの名称が使用されていますね。
残念ながらこれらの製品は国が審査をし、認可している食品ではありません。
あくまで製造者が自己的に表示しているにすぎませんので、必ずしも安全性や機能性が保証されているわけではないのです。
なお、これらの分類については厚生労働省のHPに分かりやすく表にされていますので、ご覧ください。
栄養機能食品について
余談になりますが重要なことなので記載しておきます。
栄養機能食品として機能の表示ができる成分は決められており、
- ミネラル(カルシウム、亜鉛、銅、マグネシウム、鉄)
- ビタミン(ビタミンA,B1,B2,B6,B12,C,D,E、ナイアシン、パントテン酸、葉酸)
となっています。
栄養機能食品の中には、基準を満たした上記の成分と、基準を満たさない成分の両方を含んでいる製品があります。
消費者庁許可という記載は間違いではありませんが、基準を満たさない成分も同等に過剰宣伝している場合がありますから、表示内容をきちんと確認し、どの成分が基準を満たしているのかを知る必要があるでしょう。
大切なのは広告の内容ではなく、成分とその含有量です。
健康食品を選ぶ際に気をつけたいこと
原材料や成分名をきちんと確認する
その食品には何が含まれているのかをしっかり確認する必要があるでしょう。
含まれる成分が有効であるのか、安全であるのか、成分同士の影響力は大丈夫なのか、それらを知るためにも原材料と成分名の確認は必須です。
それらがほとんど検討されていない食品も存在しますので、なおさら注意が必要と言えます。
含まれる成分の量を確認する
配合されている有効成分の量が表示されていないものは、安全性や有効性に疑問を持つべきでしょう。
製品の問い合わせ先が明記されているか確認する
その製品の製造者や販売者、輸入者の表示は食品衛生法で規定されています。
その製品に対しての質問や、使用中に不都合が出た場合にどこへ連絡しなくてはならないのか、知っておく必要があります。
健康食品を使用するときは
現代では、健康食品やサプリメントは誰でも手軽に購入できるので、多くの人が利用しています。
健康食品による健康被害の未然防止と拡大防止に向けてというパンフレットによれば、およそ3割の人が健康食品を毎日利用しており、過去の利用経験者数を含めるとおよそ8割にのぼります。
パンフレットは厚生労働省、日本医師会、国立健康・栄養研究所が共同で発行しているものなので、興味がある人は読んでみると良いでしょう。
これだけ多くの人が健康食品やサプリメントを利用していますから、利用者または今後購入を考えている人の中には、日常的に医薬品を使用している人がいるはずです。
このような人々は健康食品やサプリメントの正しい知識をもっているのでしょうか?
また、医薬品を利用していなくても人の体質は様々で、健康食品やサプリメントが健康に良くない影響を与える可能性について考えたことはあるのでしょうか?
以下の2点は十分に理解しておくことが大事です。
- 健康食品やサプリメントは病気を治すものではない
- 医薬品と健康食品・サプリメントは同時に摂取してはいけない
健康食品やサプリメントと医薬品を一緒に摂取しても病気が早く治るわけではなく、むしろ双方の成分の組み合わせによっては、薬の効果が増強あるいは減弱する可能性があります。
副作用が強く出てしまう恐れもありますから、上記2点はとても重要なことなのです。
以下の表に、健康食品に含まれる成分と医薬品との相互作用についてまとめました。
含まれる成分 | 医薬品の成分 | 想定される影響 | |
カルシウム | 活性型ビタミンD3製剤 | 骨粗しょう症薬 | 腸管からのカルシウム吸収を促進 |
ジギタリス製剤 | 心不全治療薬 | 薬効増強 | |
ビスホスホネート系製剤 | 骨粗しょう症薬 | 薬効減弱 | |
テトラサイクリン系抗菌剤など | 抗生物質 | ||
ニューキノロン系抗菌薬など | |||
マグネシウム | ビスホスホネート系製剤など | 骨粗しょう症薬 | 薬効減弱 |
ニューキノロン系抗菌薬など | 抗生物質 | ||
テトラサイクリン系抗菌剤など | |||
鉄 | タンニン酸アルブミン | 下痢止め | 薬効減弱 |
ビスホスホネート系製剤 | 骨粗しょう症薬 | ||
テトラサイクリン系抗菌剤 | 抗生物質 | ||
ニューキノロン系抗菌薬など | |||
メチルドバ | 降圧薬 | ||
ビタミンB6 | フェニトイン | 抗てんかん薬 | 薬効減弱 |
ビタミンC | アセタゾラミド | 抗てんかん薬 | 腎層・尿路結石のおそれ |
ビタミンD | ジギタリス製剤 | 心不全治療薬 | 薬効増強 |
ビタミンK
(青汁、クロレラ含む) |
ワルファリン | 抗凝固剤 | 薬効減弱 |
ナイアシン | HMG-COA還元酵素阻害薬 | 高コレステロール血症治療薬 | 副作用増強 |
葉酸 | 葉酸代謝拮抗薬 | 抗がん剤 | 薬効減弱 |
フルオロウラシル、カペシタビン | 薬効増強 | ||
中性アミノ酸 | レボドパ | 抗パーキンソン病薬 | 薬効減弱 |
コエンザイムQ10 | 降圧薬、糖尿病治療薬 | 薬効増強 |
上記は相互作用が推定される主な事例ですが、無論これらの事例だけではありません。
上記以外にも相互作用の可能性がある成分と医薬品がありますから、事前に医者や薬剤師によく相談しておくことが大切です。
健康食品を購入するときは
もしも健康食品やサプリメントの購入を考えているなら、購入前に以下の項目をチェックしてください。
- その製品が本当に必要なのかどうかを考える。
- 製品の表示内容をきちんと確認する。先述のように成分名やその含まれる量、問い合わせ先が明示されているかを確認しましょう。
- 食品衛生法などの法律に反している製品に気を付ける。海外の製品や個人輸入のものには注意しましょう。
- とりわけ通院中の人や医薬品を使用している人は医師や薬剤師に相談する。
健康食品を使用する際の注意点
健康食品は薬ではありません
健康食品は薬ではありませんから薬と同様に扱ってはいけません。
全く別のものであるという認識を持ちましょう。
また、医薬品との併用も避け、持病やアレルギーを持っている人は必ず医師や薬剤師に相談しましょう。
規定の量を守りましょう
健康食品を多量摂取することで効果が高まるという保証はどこにもありませんので、規定量を守って使用しましょう。
また、いくら食品とはいえ未解明な成分も多く、人体への悪影響が懸念される製品もあります。
そういった場合には体調を崩しかねませんので、多量摂取は絶対に止めましょう。
複数の種類を同時に摂取することはおすすめしません
多くの効果を得たいがために同時に何種類もの健康食品を利用するのも止めましょう。
健康食品同士の相互作用については、まだ解明されていないものも多く、医薬品と違い研究情報も少ないのが現状です。
複数の健康食品を同時に摂取した場合に、予想もしない悪影響が起こる可能性がありますので、もし複数を利用するのであれば自己判断は避け、医師や薬剤師に相談しましょう。
表示内容を鵜呑みにしないようにしましょう
健康食品の表示に、天然由来・自然由来などの言葉を多く見かけますね。
しかし、天然の成分だからと言って必ずしも安全である保証はありません。
むしろ天然成分には毒性があるものもあり、微量であれば問題ない成分でもサプリメントのように凝縮されている健康食品には注意すべきです。
そして、天然由来の成分を原料としている場合はアレルギーを引き起こす引き金となる可能性もあります。
何度も述べますが、健康食品が人体に与える影響については未解明の部分が少なくありません。
因果関係がはっきり解明されない被害報告も多くありますので、十分に注意が必要です。
どういった場合に相談すれば良いか
とはいえ、健康食品は食品ですから過度に不安視するのも精神衛生上、良くありません。
どういった場合に医師や薬剤師に相談すれば良いのか、以下にまとめましたので健康食品を利用する際の参考にしてください。
- 現在通院中で薬を服用している場合に、健康食品の使用を検討している場合
- 健康食品を使用中に病院を受診し、薬の服用を始める場合
- 健康食品を使用中に具合が悪くなるなど、体調に変化が現れた場合
もし現在、相談なく医薬品と健康食品を併用しており、特に健康への問題がない場合でもきちんと相談すべきです。
健康上に問題がなくとも、健康食品の成分が治療継続のための重要な情報になる可能性があります。
成分によって治療が長引いたり、処方薬を変更しなければならなかったりする可能性も十分にありますよ。
まとめ
健康食品を利用するのであれば、最低限これらの知識を覚えておくと後々のトラブルを未然に防ぐことができます。
健康食品の利用は自己責任ですから、少しでも不安要素が存在するならば、医師や薬剤師に相談し、不安を極力減らしておくべきでしょう。
この記事が、健康食品について考えるきっかけの一つになれば幸いです。
なお、この記事は公的機関や健康食品に関する情報サイトを参考にまとめています。
以下に紹介しますので、より詳しく知りたい人は参考にしてください。
参考サイト
健康食品の正しい利用法(厚生労働省) |
健康食品による健康被害の未然防止と拡大防止に向けて |
「機能性表示食品」って何?(消費者庁) |
あなたは大丈夫?健康食品利用中の体の不調(東京都福祉保健局) |
「健康食品」やサプリメントを摂りすぎてはいませんか?(日本医師会) |